山梨県は、言わずと知れた日本ワインの中心地です。県内には80以上ものワイナリーが点在し、国内のワイン生産量の約3割を占めています。勝沼・塩山・甲府盆地といった地域一帯には、ワイン畑と醸造所が広がり、まさに“ワイン文化”そのものが生活と結びついた風景が続きます。
この地がワインづくりの中心となった理由の一つが、気候と地形の恵みです。昼夜の寒暖差が大きく、雨が少ない甲府盆地はブドウ栽培に最適。また富士山・南アルプスの山々が生み出す豊富な湧き水は、ワインづくりにも欠かせません。
山梨県を語るうえで外せないのが、甲州とマスカット・ベーリーAという2つの日本固有品種です。
1300年以上の歴史を持つとされる白ワイン用ブドウ。爽やかな柑橘の香りとキレのある酸、控えめな果実味が特長で、和食とも抜群に合います。近年は樽発酵やスパークリング、オレンジワインなど、甲州の新たな表現にも挑むワイナリーが増え、世界的な評価も高まっています。
山梨で多く栽培される黒ブドウで、チャーミングな赤系果実の香りが魅力。ライトボディから樽熟成の本格派まで幅広く、日常ワインとしての人気も高い品種です。
山梨県には、明治期から続く老舗ワイナリーと、少量生産ながら革新的な造り手が混在しています。その多様性こそ、山梨ワインの面白さを形づくっています。
シャトー・メルシャン(勝沼)
日本近代ワインの道を切り開いた存在。甲州の多彩な表現、椀子や北信産のワインなども高評価。ワイナリー見学も充実しています。
まるき葡萄酒(甲府)
日本最古のワイナリーの一つとして知られ、伝統を守りつつ革新も取り入れるスタイル。甲州・ベーリーAの安定した品質には定評があります。
サントリー登美の丘ワイナリー(甲斐市)
実は豪華な自社畑を有する“日本のメドック”とも呼ばれる名門。標高の高い地で造られるシャルドネやカベルネは、日本ワインの頂点に立つクオリティです。
ドメーヌ・茅ヶ岳、ドメーヌ・ヒデ、98wines など
小規模ながら自然派、単一畑、低収量など、それぞれの哲学を持った造り手が増加中。海外のワインコンペでも賞を獲得するなど、山梨県ワインの層の厚さを示しています。
山梨県を訪れる人の多くが楽しみにしているのが、ワイナリーツーリズムです。
勝沼エリアには徒歩圏に複数のワイナリーが集まっており、1日で何軒も巡ることができます。
ワイナリーごとに甲州の仕上がりの違いを飲み比べるのも、山梨ならではの楽しみです。
南アルプスや八ヶ岳を望みながらワインを楽しめるスポットも多く、四季折々の景色が旅の魅力をさらに引き立てます。秋の収穫シーズンには、黄金色に輝く甲州畑が広がり、思わず写真を撮りたくなる美しさです。
山梨県のワインは、今まさに進化の真っ只中にあります。
甲州の新たな醸造スタイル、国際品種との挑戦、自然派ワインの台頭。
さらに近年では、「山梨ワイン」を日本酒やクラフトビールと並ぶ“地域ブランド”として発信する動きも活発です。ワインは単なる飲み物にとどまらず、地域の文化・観光・農業を支える柱として大きな役割を果たしています。
山梨を訪れ、ワインを飲み、造り手の話に耳を傾けると、
“日本ワインの未来はここから広がっていく”
そんな確かな息づかいを感じられるはずです。