自然と人が醸す、甲州の味わい「フジクレールワイナリー(旧フジッコワイナリー)」の挑戦


自然の恵みと人の手が調和する、甲州の地で

山梨県笛吹市一宮町。この地にある「フジクレールワイナリー(旧フジッコワイナリー)」は、かつて健康食品メーカーとして知られるフジッコ株式会社のワイン部門から誕生しました。2020年代に入り独立を果たし、新たなブランド「フジクレールワイナリー」として再スタートを切りましたが、その根底には創業以来の理念――“自然と調和し、人の心に響くワインを造る”――が息づいています。

 

 

この地は、甲府盆地の南東部に位置し、日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きいブドウ栽培に理想的な環境です。フジクレールでは、この恵まれた風土を最大限に活かし、化学肥料や除草剤を極力使わない持続可能な農法を実践。畑の草を生やし、虫や微生物との共生を図るなど、自然環境と調和した“生きた畑”づくりに取り組んでいます。

 


「クレール=澄んだ心」で造る自然派ワイン

「クレール(clair)」とはフランス語で“澄んだ”という意味。その名が示すように、フジクレールワイナリーのワイン造りは、素材の個性を曇りなく表現することを目指しています。

 

同ワイナリーの特徴の一つは、極力人の手を加えない「ナチュラルワイン」の哲学です。天然酵母による発酵、亜硫酸の最小限使用、無濾過・無清澄の製法など、ブドウ本来の生命力と土地の個性をそのままボトルに閉じ込めます。こうして生まれるワインは、年ごとに微妙に異なる表情を見せながらも、どれもが「甲州」という土地の空気を纏った優しい味わいに仕上がります。

 

 

代表的な銘柄には、甲州種を用いた「フジクレール 甲州」や、マスカット・ベーリーAを自然発酵させた「フジクレール ベーリーA」などがあります。前者は繊細な柑橘の香りとミネラル感が際立ち、和食に寄り添う上品な仕上がり。後者は熟した果実味と柔らかなタンニンが調和し、穏やかで温もりある味わいを見せます。いずれも派手さよりも、静かな余韻と奥ゆかしさが印象的な一本です。

 


伝統と革新のバランスを追求するワイナリー

フジクレールの哲学は、単なる自然派ワインの域に留まりません。ブドウの育成から醸造、瓶詰まで一貫して行う「ドメーヌスタイル」を採用し、トレーサビリティと品質を徹底管理。また、伝統的な甲州ワインの良さを守りながらも、スキンコンタクト(果皮浸漬)やアンフォラ(素焼きの壺)発酵といった革新的手法も積極的に導入しています。

 

 

これにより、甲州種の持つ透明感や酸味を活かしつつ、より奥行きのある味わいを表現することが可能となりました。まさに“伝統と革新の融合”――それが、フジクレールが描く未来の日本ワインの姿なのです。

 


人と土地をつなぐ、地域共生型ワイナリーへ

地域とのつながりも、フジクレールの重要な柱です。ワイン造りだけでなく、地元農家との協働や、学生との研修プログラム、見学ツアーなどを通じて、ワイン文化の普及と地域活性化にも力を注いでいます。

 

 

ワイナリー併設のショップでは、限定ワインや地元食材とのマリアージュが楽しめるほか、季節ごとに収穫体験やテイスティングイベントも開催。訪れる人々が、ブドウ畑の風を感じながら五感で“ワインの源流”を体験できる場を提供しています。

 


「フジクレール」という名のメッセージ

フジッコという大企業の傘下から独立し、あえて小規模ながらも本質的なワイン造りを選んだフジクレール。その姿勢には、「本当に美味しいワインとは何か?」という問いへの真摯な答えが込められています。

 

化学的な安定よりも、自然がもたらす不均一の美を大切にすること。大量生産ではなく、手の届く範囲で品質を極めること。そんなクラフトマンシップが、一本一本のボトルに息づいています。

 

 

透明で、静かで、心に沁みるようなワイン――。
フジクレールワイナリーのワインは、まさにその名の通り、「澄んだ心」で造られた一本です。