南仏生まれの品種「サンソー」。軽やかで華やかな香りが魅力のワインは、ロゼから赤まで多彩。地中海の風を感じるその味わいを解説。
「サンソー(Cinsault)」は、南フランスを中心に古くから栽培されている黒ぶどう品種です。特にラングドック地方やプロヴァンス、ローヌ地方南部など、温暖で乾燥した地中海性気候のもとで豊かに実を結びます。
その最大の特徴は、軽やかで香り高く、繊細な味わい。酸味と果実味のバランスがよく、タンニンは控えめ。単独でも魅力的ですが、ブレンド用としても優れており、特にグルナッシュやシラー、ムールヴェードルなどと共に「南仏ブレンド」の一翼を担っています。
サンソーのワインは、淡いルビー色をしており、赤いベリーやチェリー、ラズベリー、すみれの花など、可憐でフルーティな香りが特徴です。
味わいは非常に柔らかく、飲み心地が軽快。重厚さよりも、エレガントで親しみやすい印象を与えます。そのため、暑い季節にもスッと楽しめる赤ワインとして人気があります。
また、低タンニンで酸味が穏やかなため、冷やしても美味しくいただけます。ロゼワインの生産にも多用され、南仏のロゼが持つフレッシュで透明感のある風味の要となっています。
サンソーは単一品種ワインとしても魅力的ですが、ブレンドではその真価を発揮します。
例えば、シャトー・ヌフ・デュ・パプなどの銘醸地では、濃厚なシラーやムールヴェードルにサンソーを加えることで、軽やかさと香りの立ち上がりを与えています。
このように、サンソーは「重さを調和させる繊細なタッチ」をもたらす存在として、ワイン造りのバランスを整える重要な役割を果たしています。
南フランス以外でも、サンソーは世界各地で栽培されています。南アフリカでは「ヘリテージ品種」として知られ、かつては最も多く植えられたぶどうのひとつでした。
また、レバノンやチリ、アメリカ・カリフォルニアでも見られ、それぞれの土地で異なる個性を表現しています。特にチリ産のサンソーは、果実の凝縮感とミネラル感があり、冷涼な地域ではエレガントな酸味が引き立ちます。
サンソーのワインは、軽やかでフルーティな性格から、地中海料理や和食にもよく合います。
グリル野菜やトマトを使った料理
ハーブを効かせた鶏肉や魚料理
軽いチーズ、カプレーゼやラタトゥイユ
冷やしたロゼなら寿司や天ぷらにも
重すぎず、素材の味を邪魔しないため、家庭の食卓にも取り入れやすいワインです。
サンソーは、派手さよりもしなやかさとバランスの良さで魅了するワインです。
軽やかで香り豊か、どんなシーンにも寄り添う包容力。地中海の太陽と風が育んだこの品種は、ワインの世界において“陰の立役者”とも言える存在です。
ワイン初心者から愛好家まで、サンソーの優しい味わいを一度体験してみてはいかがでしょうか。